たまご夫です。ドイツで大学院生をしています。
2023年2月、私がセカンドバチェラーとして1年半通ったハンガリーのEötvös Loránd University(ELTE)のComputer Science(CS)学部を退学しました。実際に通ってみて感じたメリットとデメリットを書いてみようと思います。
ELTEでCSを専攻するメリット
1.低いコスト
ハンガリー政府の奨学金(Stipendium Hungaricum)を利用できれば、非常に安くハンガリーで留学できます。この奨学金を受けられれば、月に3〜4万円程度の生活費だけで生活できる可能性があります。他のヨーロッパの大学で同じような条件を提供するところはほとんどないと思われます。ただし、自費留学の場合は、学費が6400ユーロ/年(約85-95万円)となり、生活費も含めると年間約200万円かかると見積もられます。
2.英語で学べるコンピュータサイエンス(CS)のカリキュラム
この大学では、コンピュータサイエンスについての知識や技術を一通り英語で学べます。ただし、授業の質には個々の先生や授業による差があり、理解が難しい場合には補助教材やYouTubeなどを利用して補完する必要があることもあります。
3.ヨーロッパでの学位取得
ヨーロッパで就職する際には、多くの場合、学位が必要となります。ハンガリーで学位を取得できるという点は、その意味ではメリットかもしれません。
ELTEでCSを専攻するデメリット
1.卒業率は約1/3
これは統計を取ったわけではないですが、一般的な話や私の感覚と一致します。入学試験は主に英語のみで行われるため、学生の学力には大きなばらつきがあります。自分のクラスには非常に優秀な生徒もいれば、そうでない生徒も多数いました。不勉強な生徒はほとんどが次々と留年や退学をします。6つの科目で落第するか、同じ科目を3回落第した時点で退学です。
ただし、退学はマイナスな理由だけではありません。例えば、優秀すぎてELTEよりもレベルの高い大学に進学するために退学する生徒もいます。また、コンピュータサイエンスのカリキュラムが自分に合わないと感じ、別の学科に再入学する生徒もいます。
2.留学生サポートが不十分
留学生支援のスタッフが少ないのが原因で、質問に対する返信が遅かったり無視されたりします。また、留学生向けのオリエンテーションやガイダンスが存在しないため、留学始めに混乱が起こりました。
3.日本人が多い
これはメリットと捉えることもできます。ELTEには多くの日本人が存在します(多いときでCSの1/10が日本人)。異国の地に来たのに日本人とばかり接するのは何となく期待外れという方もいるかもしれません。
4.卒業後の就職
大学院進学や就職など学部卒業後の進路も考えると思います。ELTEから他のEU諸国に就職することも可能だと思いますが、他の国に就職することが目的ならばその国の学校を卒業したほうが圧倒的に近道です。
5.卒業後ビザの問題
例えば、オーストラリアやドイツの大学を卒業すると、1.5〜3年の卒業ビザが支給されるので、その期間は余裕をもって就活したり、就業経験を積めます。ただし、ハンガリーの場合はそういう恩恵が(自分調べでは)ないと思います。キャリアセンターも(留学生向けは)ないので、自分で調べない限りはそういう就活情報が全く入ってきません。
6.生活費
ハンガリーの生活費は一見安いように思えますが、実際はそうでもないです。食費や交通費を考慮すると、一か月に約8万円以上は必要になると思います。昨今(2023年現在)のインフレや円安の影響で、日々生活コストは増加中です。
7.英語の上達には努力が必要
これは当然のことながら、日常生活では簡単な英語しか使わず、基本的にハンガリー人はハンガリー語を話すので、学校以外で十分に英語を使う機会は少ないです。授業は英語ですが、英語力を伸ばすためには自主的に努力し続けなければなりません。
8.ハンガリー語を習得するのは困難
たまに留学すれば自動的に現地の言葉を話せるようになるという幻想を抱く留学生もいますが、そのようなことはありません。ハンガリー語を理解し、話す能力を習得するには、自分で努力して授業を受け、ハンガリー人のコミュニティに参加して実際に使う必要があります。
9.ハンガリー人の友達を作るのは難しい
ハンガリーの高校から入学した学生とは完全に別のカリキュラムなので、ハンガリー人との接触を持つには自分からその機会を探さなければなりません。また、留学生の中にはキルギス人やアラビア語圏の人が多く、彼らの間ではロシア語やアラビア語が飛び交っています。留学生同士で仲良くなる人もいますが、ハンガリー人とハンガリー語でコミュニケーションを取る留学生はCS学部では見たことがないです。
まとめ
以上、ELTE留学のメリット、デメリットについて書いてみました。あくまで個人の一意見として、留学を決める際に参考にしてもらえるとうれしいです。